スポンサーリンク

第3話『ランタ シュア レストラン』 all around the world

ランタシュアレストラン 未分類
テキスト本文朗読 by Amazon Polly

ランタ島の初日の夜、さっそくシーフードを楽しもうと街を歩き、なんとなく良さげなレストランに入った。まだ島の地理を把握できていないから、ホテルを出て少し遠くへと歩いて行くだけでも楽しい。旅先のテンションというものは脳を少し馬鹿にするので、タイの田舎に行けばどこにでもあるような民家に対しても、少なからず興味を抱いてしまう。ある民家の軒先にやたらと水の入ったペットボトルが大量に並べられている様子を見て、この島では猫除けか何かの目的で、あのようなことをする風習があるんだなと感心する。後になって考えれば、あんな大量のペットボトルに埋め尽くされた軒先は、あの家以外には無かったりもする。旅行者がついついやってしまう悪い癖である。

まだ時間が早いのか、私たち以外には1組の客しかいない。アンダマン海に沈む夕日をじっくりと眺めて、2018年の最後から2番目の日没を堪能してからホテルを出て来たので、既に夜ではあるんだけど、店内は落ち着いた様子である。どうやら海老が美味しそうだということで、えびチャーハンを頼んだ。似たような理由で、イカの丸焼きも頼んだ。年末年始の休暇をゆっくりと過ごそうという旅行なので、今回の滞在では特に決まった予定はない。食べることと寝ること以外の予定はないので、相対的に食事が重要なイベントになる。ここの料理の良し悪しによって、ランタ島での日々の良し悪しが決まると言っても過言ではない。

ただ雰囲気が良さそうだという理由だけで入ったレストランの店名は、ランタシュアレストラン。ここから見える限りでは、席数は全部で10席程度。決して大きな店舗ではないけれども、この島では似たようなサイズの店が多い。私が座っている場所からは全体が覗き見れるキッチンには女性が2人。親子ほどの年の離れた2人が、忙しそうに手を動かしている。ホールを担当しているのは1人の男性のみ。あともう一人、ビールを持って来てくれた男性がいたんだけど、どこかに行ってしまった。彼は店のスタッフなのかどうかは不明。こういう謎の存在のスタッフっぽい人物というのは、タイでは珍しくないので特に驚きはしない。

昨夜のバスは揺れたねぇとか、良く寝ていたから揺れたのに気づかなかったよとか、順調に来れて良かったねぇとか、夕日が綺麗だったねぇとか、2018年ももうすぐ終わるねぇとか、今日この日にこの場所で話しそうな話題は全て登場した。何ならそれぞれのパートを2回、あるいは3回くらい繰り返したように思うんだけど、ビールが届けられてからというもの次に続くものが何も出てこない。私たちが注文したあとから、3組のグループが店に入ってきて、少しずつ店内は活気づいてきた。もちろん、どこのテーブルにも料理は何ひとつ出ていない。

そういえば、大晦日の夜というのは、ランタ島はどのような盛り上がりなのだろう。バンコクから車で2時間の観光地パタヤでは、年が明けるころには大量の花火がビーチのあちこちから上がる。2年前に年越しをしたミャンマー南部の無人島ニャンウーピー島では、派手な花火などの演出は無いが、宿泊施設の従業員たちが総出演の学芸会のような年越しイベントがあった。キッチンスタッフの男の子たちが1か月ほどかけて練習したのであろうファイヤーショーは、素人のやる隠し芸のハラハラ感を含んで、今でも楽しかった記憶が鮮明に残っている。ビーチで打ち上げられた花火も、スーパーで買ってきたファミリーセットのようなものだったけど、あれはあれで良い年越しだった。

日本では花火は夏の風物詩だけど、タイでは12月というイメージが強い。プミポン前国王の誕生日だった12月5日に始まり、年越しまでの期間中にはあちこちで花火が上げられる。日本が夏の8月は、タイは雨期の真っただ中で花火には向いていない季節だし、あまり花火を打ち上げる口実になるような行事がないので、結果的に花火と言えば12月ということになっている。

ランタ島が年越しの瞬間にどのようなことになっているかについては、誰も情報を持っていなかったので、見てからのお楽しみということで話が終わった。うん、この席に座ってからというもの、随分と色んな話が終わった。しかし、キッチンで忙しそうに働いている女性2人の仕事は終わらない。入店時には腹が減ったことを強く感じていたのだけど、もうすでに腹が減っているのかどうかさえ怪しい。注文が忘れられてしまっているのではないかと不安になるが、他のどのテーブルにもドリンク以外に置かれていないので安心する。

定期的に、料理がなかなか出てこないねという話題になるものの、そんな話題に花を咲かせていても仕方がないので、何か別の話のネタを探す。頭のなかには何も無さそうだから、店内のインテリアや壁の貼り紙などを見回す。美味しそうな大ぶりの魚の煮つけの写真があって、これも注文しておけば良かったと思ったけど、今さら追加注文をする気にもならない。相変わらず、キッチンの女性たちは忙しそうに手を動かしている。

あ、そういえばバイクをレンタルする場合には、どうすれば良いのかなという話題をしようとしたところで、一品目のえびチャーハンがテーブルに置かれ、そしてイカの丸焼きも並べられた。なるほど、全ての料理を作り終えてから提供するスタイルなのか。ランタ島のレストランは料理の提供スピードがゆっくりなので注意しよう。まだ1軒のレストランの事情しか知らないのに、これがまるでランタ島の全てのレストランに当てはまるかのように感じるのは、旅行者の悪い癖だ。でも、実際のところ、4日間のランタ島滞在で入った10軒以上の全ての店で、注文から最低でも30分以上は待たされた。悪い癖は、たまに正解するから困る。

コメント