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2019年3月、シベリア鉄道でロシアを横断しました。横断と言いつつもイルクーツクからモスクワまでなので何だか中途半端ではありますが、事前に調べた情報とは異なることがいくつもありましたので、それらについてまとめます。
列車の中で何泊もして時間の感覚が麻痺してしまう旅でしたが、とても面白かったので是非とも多くの方にシベリア鉄道に乗っていただきたいと思います。
では、シベリア鉄道に乗る前に知っておくべき12のことです。
ロシアは自由旅行が可能
まずロシア旅行に関する誤解のひとつが、ロシアに行くには全ての日程を事前に決めておかなければならないというものです。
たしかにロシア観光ビザの取得段階で、どこの都市へ行き、どこのホテルに泊まるのかを申請する必要があるのですが、書類に書いた以外の都市に行くことが制限されているわけでもありませんし、書類に書いたホテルには必ず宿泊しなければならないわけでもありません。
ですから、ロシア旅行では他の国と同じように、その日の思い付きで訪問先を決めたり宿泊ホテルを決めたりする自由旅行が可能です。
ロシア国内移動であればシベリア鉄道は高くない
高い安いという金額については個人差があるかと思いますが、事前に値段を調べる時に注意していただきたいのが、ロシア国内移動の列車料金と、ロシア隣国との国際列車では随分と値段が違うということです。
実際、国際列車としてはモンゴルのウランバートルからイルクーツク、またモスクワからベラルーシのミンスクまでの路線に乗りましたが、ロシア国内の都市間を移動する列車と比べて随分と割高でした。
ですから、シベリア鉄道のみを優先した旅程を組むのであれば、ウラジオストクからロシアに入国して、ロシア国内のみを移動する路線に乗ってモスクワまで行くのが良いです。
なんだかんだで3等車(3rd Class)が最も快適
シベリア鉄道の列車にはいくつかの等級があります。最もオーソドックスなのが1等車、2等車、3等車で、どれも寝台車両です。等級ごとに何が違うのかというと1等車と2等車が個室タイプであるのに対して、3等車は個室ではないオープンタイプであることです。
個室と言っても、もちろん2人部屋や4人部屋となりますので、2人や4人で旅行しない限りは全く見ず知らずの誰かとの同室になります。シベリア鉄道はロシアの地元の人たちも活用する路線ですので、大体の場合にはロシア人と同室になります。狭く仕切られた個室タイプの車両で1泊や2泊、長ければ6泊の時間を過ごすのは結構キツイです。
一方、3等車では個室タイプとは違って扉がなく、通路側にもベッドがあって窮屈な場面もあるものの、基本的には移動が自由でスムーズなので気持ちが楽です。
限りなく時刻表通りに運行される
日本の列車だけが時刻表通りに運行されているという謎の神話が日本には蔓延していますが、シベリア鉄道の運行管理は見事です。数日をかけて厳しい自然のなかを走行するシベリア鉄道ですが、ほとんどの駅に時刻表の時間通りに到着し、時刻表の時間通りに出発します。
最初の駅に到着した段階で4時間遅れなんていうのもザラであるタイ国鉄とは全く違います。
時刻表は現地時間、モスクワ時間ではない
少し古いシベリア鉄道関連のウェブサイトを見ると、シベリア鉄道の時刻表記は全てがモスクワ時間であると記載されています。駅の時刻表もモスクワ時間で表示されているなどと書かれているのですが、そんなことはありませんでした。
ウランバートルではモンゴルの時刻が、イルクーツクではイルクーツクの時刻が、ノヴォシビルスクではノヴォシビルスクの時刻が表示されていました。
ノヴォシビルスクからモスクワの間の移動では、列車に乗っている間にタイムゾーンを4つ越えました。2泊3日の列車旅のなかで5時間の時刻の変更があります。ですからモスクワ時刻で統一するという方法があながち不便ではないのですが、現在では基本的に現地時刻での案内が多いです。
シベリア鉄道のチケットはオンラインで購入できる
シベリア鉄道の乗車券(チケット)は、オンラインで購入することが可能です。時間に余裕のある旅行であれば、行く先々の都市の駅の窓口でチケットを購入することも出来ますが、意外と満席になることが多いので出発日が近づくとチケットが売り切れていますので、事前にオンライン購入しておくことをおすすめします。
英語での購入が可能なRussiatrain.comが便利です。
このサイトで購入するとメールが送られてきて、そこに添付されている書類がそのままイーチケットとして使えます。できればプリントアウトしておきたいですが、スマホに保存しておいたものを車掌さんに見せるだけでも普通に乗れました。
座席は絶対下段、とにかく下段
2等や3等車両の寝台では、二段ベッドになっています。上段の方が料金が安い場合もありますが、絶対に下段がおすすめです。
まず上段では何をするにも昇り降りが必要になります。階段やハシゴのようなものは無く、5センチ程度の突起物に足をかけて昇らなければなりません。そして、天井高が十分ではないので上に昇ってもかなり窮屈です。正座して座ることが不可能な程度の高さです。
またテーブルが下段にしかありません。一応は上段と下段の共有スペースということになっていますが、下段の人が寝ていたらテーブルが使えません。また起きていたとしても、下段のひとのベッドに腰掛ける状態になるため、わりと気まずいです。
各車両には2人程度の車掌さんが乗っている
個人的には最初、かなり衝撃的だったんですがシベリア鉄道では全ての車両に1人か2人の車掌さんが常駐しています。
車掌さんは、その車両の乗客のチケットの確認や、車内販売の飲み物の販売、シーツなどの配布、トイレの管理、ゴミの回収、暖房のための石炭の補充、担当車両の車輪についた氷を砕くなどなど、とにかくありとあらゆる作業を担当しています。
正直なところ、車掌さんには当たりはずれがあり、世話好きで優しい車掌さんもいれば、面倒くさそうに仕事をこなす車掌さんもいます。長距離(3泊以上)のシベリア鉄道に乗るときのリスクは、車掌さんがハズレだった時が最悪ってことです。
駅が近づくとトイレが使えなくなる
シベリア鉄道の車内のトイレは基本的に垂れ流しです。トイレで用を足したら、そのまま線路へと流れ落ちていきます。このため、列車が停車する駅ではトイレが使えなくなります。長時間停車駅でも、停車中は車内のトイレが使えません。
最近では、バイオトイレという垂れ流さずに浄化槽に貯めるタイプの車両が増えてきていますので、バイオトイレの場合には停車中であってもトイレを使用することが出来ます。
朝方や終点前などにはトイレが混み合いますし、シベリア鉄道での懸念材料のひとつがトイレだと思います。慣れるまでは少し大変ですが、そのうち慣れます
長時間の停車駅は、喫煙と買い出しのチャンス
長い長い列車の旅であるシベリア鉄道ですが、長時間停車駅というのは数えるほどしかありません。長時間と言っても20分程度の場合が多いのですが、ずっと車窓を眺めているだけの時間を繰り返していると、その20分がとても貴重です。
特に喫煙者にとっては、長時間停車駅のみが喫煙のチャンスです。シベリア鉄道の全ての駅のホームが喫煙可能ですので、列車を降りてスグのところでタバコに火を付けます。あまり列車から離れてしまうと、置いて行かれるリスクがありますので注意しましょう。
また、駅によってはホームに売店があり、お菓子や飲み物などを購入することが可能です。かなり限られた駅では、ピロシキなどの惣菜が売られていてハッピーな気分になります。
電源はあるけど、Wi-Fiは無い
ロシア用の丸い2本の穴に差す電源プラグが必要になりますが、大体の車両で電源があります。下段にはあるけど上段にはなかったり、ボックス席にはあるけど通路側にはなかったりと色んなパターンがありますが、とにかく大体の車両に電源があります。
ただ、Wi-Fiに関しては期待できません。一応、ロシア国鉄のWi-Fiが付いていると自称している車両もあるのですが、まともに使えたことは一度もありませんでした。どうして使えないんだよとイライラする気持ちにもなりますが、窓の外を見れば広大な大自然ですのでWi-Fiが使えないのも納得できます。
ロシアのSIMカードを差しておけば、駅での停車中などは電波が入ります。ただし走行中に関しては、ほぼ圏外ですので諦めましょう。
冬が良い
寒い時に寒いところに行くことに抵抗がある方も多いかもしれませんが、シベリア鉄道は冬が良いと思います。車内に関しては常に石炭によって温められていますので、凍えるような寒さを感じることは一度たりともありません。
そんな暖かで快適な車内から眺める真っ白なシベリアの景色は最高です。また、ところどころの停車駅で凍てつくような寒さを実感するのもまた、楽しみのひとつだと思います。
まぁ、私は冬のシベリア鉄道しか体験していませんので、次の機会には夏のシベリア鉄道を楽しみたいとは思っていますが、とにかく冬のシベリア鉄道はとても良かったです。