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イルクーツクの街の象徴的な存在であるバブルの像です。
バブルというのは神話上の生き物で、元々はシベリアンタイガーがモチーフとされていました。しかし、時間が経つにつれてトラの特徴とは全く異なった姿で描かれるようになり現在のような姿になっています。
バブル像のある広場
イルクーツクの象徴的存在ですので、街を歩いているとあちこちでバブルの絵や像などを見ることが出来ますが、単に「バブル像」と言った場合には、この写真のバブル像のことを指します。
バブル像の裏手には現在、お洒落な飲食店やスーパーマーケットなどが軒を連ねていて、この広場の人通りは多いです。観光客だけではなく、地元の人たちの往来もあり、常に賑やかな場所です。
バブルの逸話・歴史
そもそも神話上の生き物なのですが、バブルには様々な逸話があります。
イルクーツクの始まりは1686年で、狩猟や毛皮取引の拠点だった場所が発展して市となりました。市としての承認が下りたことで、イルクーツクでは紋章を作る必要があり、シベリアンタイガーをモチーフにして紋章の制作を始めました。そして、この紋章に描いた生物の名前として、イルクーツクの神話上の生き物である「バブル」の名前を付けることとなりました。しかし、当時のシベリアンタイガーをモチーフにした紋章は一般には普及しませんでした。
そして随分と時が経過した19世紀の後半ごろ、改めてイルクーツクの紋章を作り直すという指令を受けた役人たちがサンクトペテルブルから派遣されました。以前の紋章についてイルクーツクの人々に聞いてみると「バブル」だと答えるのですが、サンクトペテルブルの役人は当然「バブル」という神話上の生き物を知らず、「バブル(Babr)」とは「ビーバー(Bobr)」のことを指しているのだろうと誤って解釈しました。
その結果、前歯が飛び出しており、尻尾が平たくて長いという特徴を持ちつつも、元ネタであるトラのイメージを残しつつ、良く分からない生物のイメージが完成しました。そして、古くに名付けなれた「バブル」という名前だけは変えられなかったため、この良く分からない生物は「バブル」という名前で人々に知られており、イルクーツクの人々に親しまれています。
バブルが口に咥えているのは”クロテン”
バブルは前歯が出ているという設定なのですが、バブル像では何かを口に咥えている状態のため前歯が見えません。そして、その口に咥えているものですが、クロテンという北海道にも生息しているキツネ科の動物です。
この「クロテンを咥える」という設定は、17世紀後半に最初にイルクーツクの紋章を考えた人たちのアイデアがそのまま残されています。